倉庫の原状回復とは? 必要な工事内容や注意点などを分かりやすく解説
2026/06/01
基礎知識
倉庫の移転や退去を検討するに当たり「原状回復にどのくらい費用がかかるのか分からない」「想定外の請求が発生しないか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
倉庫は規模や設備が大きく、退去時の原状回復に想像以上の費用や手間がかかる場合があります。そのため物件を選ぶ段階から、初期費用や賃料だけではなく退去時に必要となる対応まで見据えて準備を進めることが大切です。
本記事では、倉庫の原状回復の基本や必要な工事内容、費用を抑えるポイントについて分かりやすく解説します。事前にポイントを把握しておくことで、退去時のトラブル防止や予算計画の立てやすさにもつながるでしょう。
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原状回復とは?
原状回復とは、賃貸借契約が終了した際に、借りた当初の状態に戻して貸主へ返還することを指します。
国土交通省のガイドラインでは、借主の故意や過失による損傷や、通常の使用を超える損耗などが原状回復の対象となるとされています。一方で、時間の経過による劣化や日常的な使用による汚れは、原則として原状回復の対象には含まれていません。
ただし、倉庫や工場といった事業用物件では、特約によって通常損耗や経年劣化がみられる箇所も原状回復を求められるケースが多く見られます。特約があれば契約内容が優先されるのが正しいですが、認識の違いによっては戸惑う場合もあるでしょう。一般的なルールだけではなく、契約上どこまで求められるのかも合わせて理解しておくことが重要です。
※参考:国土交通省.「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料」.(参照2026-03-20).
倉庫の原状回復が必要な範囲
倉庫の原状回復は、入居時の状態に戻すのが基本です。どの範囲まで対応が必要かは、契約内容や入居時の状態によって異なります。
例えばスケルトンの状態で入居した場合、設置した内装や設備を全て撤去する工事が求められることがあります。また前述の通り、倉庫では通常損耗や経年劣化がみられる箇所も原状回復の範囲と見なされるケースもあり、その場合は対応範囲が広くなりやすい点に注意が必要です。
倉庫の原状回復の具体例
倉庫の原状回復には、さまざまな工事が含まれます。具体的にどのような工事があるのか、内装工事と外装・外構工事に分けて見ていきましょう。
内装工事
内装工事では、倉庫内部の使用によって生じた損傷箇所の補修や、設置した設備の撤去などを行います。
例えば床面では、フォークリフトの走行によるタイヤ跡や、ひび割れなどの補修が必要となるケースが考えられます。油汚れの洗浄や既存塗膜の研磨を行い、再塗装を実施する必要が出てくるケースもあるでしょう。
また内装工事の際に設置した中二階や間仕切り壁といった造作物は、退去時に解体・撤去する必要があります。照明や空調、ダクト、ラック、配線・配管などの設備も同様に対象となるのが一般的です。壁や天井においては、汚れや黄ばみ、臭いなどの除去を行います。
原状回復は、範囲が広ければ広いほど費用も増える傾向にあります。想定していなかった費用負担を防ぐためにも、退去や移転の計画を立てる段階で、原状回復に必要な工事内容を確認しておくと安心です。
外装・外構工事
外装・外構工事では、建物の外部や敷地部分の損耗箇所を修繕します。
搬入口やシャッターは、接触によるへこみや変形が発生しやすい箇所です。こうした損傷が見られる場合は、修繕が必要です。設備の故障がある場合は、部分補修や交換が必要になるケースもあるでしょう。
またトラックヤードや駐車場では、アスファルトの打ち替えやコンクリートのひび割れ補修、油染みの洗浄を行うことがあります。さらに摩耗した区画ラインの再塗装や不要なラインの消去、看板・フェンスの撤去、庇(ひさし)のサビ補修、柱や梁(はり)のひび割れ補修なども、必要に応じて行います。
特にトラックの出入りが多い倉庫では、屋外部分の劣化が目立ちやすい傾向にあるため、見落としやすい外構部分まで確認しておくのがポイントです。
倉庫の原状回復を行う際のポイント

倉庫の原状回復を進める際は、事前に確認しておきたい点がいくつかあります。あらかじめ押さえておくことで、退去時の対応を進めやすくなるでしょう。
ここでは、特に確認しておきたい3つのポイントを紹介します。
修繕範囲を事前に確認する
原状回復の範囲は、契約書の内容によって決まります。まずは契約内容を確認し、どこまでが借主負担となるのかを把握することが重要です。
先述の通り、倉庫などの事業用物件では、経年劣化や通常損耗がみられる箇所の修理も借主負担とする特約が設けられている場合があります。「現況に復す」といった曖昧な表現ではなく、具体的な修繕項目や負担範囲が明記されているかどうかを確認しておきましょう。
必要に応じて専門家へ相談しながら、貸主と事前に認識をすり合わせておくと安心です。
倉庫の状態を記録する
入居時の倉庫の状態を記録しておくことは、原状回復トラブルを防ぐ上で重要なポイントです。床のひび割れやシャッターのへこみなど、既存の傷や汚れを写真や動画で残しておきましょう。
また記録した内容は、貸主と書面で共有しておくことが重要です。現況の証拠が不足していると、損傷がいつ発生したのかの判断がしにくくなります。
例えば撮影日時を残したり、全体と細部の両方を記録したりすると、より客観的な証明につながるでしょう。こうした準備をしっかりと行えば、不当な修繕費用の請求を回避しやすくなります。
追加した造作物・設備を撤去する
入居後に設置した造作物や設備は、退去時に撤去を求められることが一般的です。中二階や間仕切り壁、ラック、空調設備、看板などは対象となるケースが多く見られます。
これらを設置する際は、貸主から承諾を得た上で、撤去が必要かどうかなどの条件を確認しておくことが大切です。事前に取り決めておけば、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。
また不要になった設備は、有価物として売却できる可能性もあります。産業廃棄物の処分費用の削減や資産の有効活用につながるため、状況に応じて検討すると良いでしょう。
倉庫の原状回復にかかる費用相場
倉庫の原状回復費用は、物件の状態や残置物の量によって大きく変動します。目安としては、1㎡当たりトータルで30,000円前後かかるケースが一般的です。
50㎡程度の小規模な倉庫であれば、数十万円前後で済むこともあるでしょう。しかし前述の通り、原状回復は範囲が広くなるほど必要な工事が増えます。その分、費用も上がるため、数百万円以上になるケースも珍しくありません。
また、床補修の有無や設備撤去の規模、廃材処分の量などによって、総額は変わりやすくなります。あらかじめ費用がかかりやすい項目を把握しておくことが大切です。
内訳
では、どのような作業に費用が発生するのでしょうか。主な内訳は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 費用目安 |
| 内装撤去費 | 間仕切りや中二階などの解体・撤去 | 1㎡当たり2,000~5,000円 |
| 床補修・再塗装費 | 床のひび割れ補修や塗装のやり直し | 1㎡当たり3,000~8,000円 |
| 設備撤去費 | 照明・空調・ラックなどの撤去 | 数十万~数百万円 |
| 外装・外構修繕費 | トラックヤードやシャッターなどの補修 | 数十万~数百万円 |
| 清掃・廃材処分費 | 建物の清掃や廃棄物処理 | 数十万円 |
これらの費用は工事内容や規模によって大きく変わるため、あくまでも目安として押さえておきましょう。全体像を把握した上で見積もりを確認することが重要です。
倉庫の原状回復費用を安く抑えるコツ

倉庫の原状回復費用は、事前に工夫することによって抑えられる可能性があります。
ここでは、費用をなるべく抑えるための4つのコツを紹介します。それぞれ詳しく確認していきましょう。
設備や資材を売却する
倉庫内に設置していたラックやコンベヤなどは、有価物として売却できる可能性があります。産業廃棄物として処理する場合は費用が発生しますが、売却できれば、その分の費用を抑えられるでしょう。
またリユースを前提とした売却は、資源の有効活用にもつながります。CO2排出量の削減が期待できる点もメリットです。
ただし、全ての設備が売却できるわけではないため、条件に応じて専門業者に相談しながら進めると安心です。
貸主と再利用の交渉をする
設置している設備が次のテナントでも使用できる場合、撤去を求められないケースがあります。
例えば状態の良いラックや空調設備などは再利用されやすく、交渉によって原状回復費用の一部を抑えられる可能性もあるでしょう。そのため、再利用が見込まれる設備については、早めに貸主へ相談しておくことが大切です。
また確認した内容は書面で残しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。条件は物件や契約によって異なるため、状況に応じて確認を進めましょう。
複数の業者の見積もりを比較する
原状回復工事は、貸主や管理会社が指定する業者に依頼するケースが一般的です。競争原理が働きにくく、費用が高くなりがちな点に注意しましょう。適正な費用を把握するためには、第三者の業者から相見積もりを取得することが重要です。
見積書では工事項目や単価、作業範囲などを確認し、内容の妥当性を比較しましょう。複数の見積もりを把握しておけば、適正価格を判断しやすくなり、交渉材料として活用できる場合があります。
スケジュールに余裕を持って進める
原状回復工事は規模が大きくなるほど、準備から完了までに時間がかかります。退去日に間に合わせるためには、余裕のあるスケジュールで進めることが大切です。
特に年度末などの繁忙期は工事が集中しやすく、急な対応となった場合では費用が上がる傾向にあります。余裕を持って計画すると、業者の選定や交渉の選択肢も広がるため、結果としてコスト削減につながる可能性があるでしょう。
まとめ
倉庫の原状回復は、床の補修や設備の撤去、外構の修繕など、大掛かりな工事につながることがあります。対応範囲は契約内容によって異なるため、契約内容の確認や入居時の現況記録をしっかりと行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
なお原状回復費用は倉庫の現況、設備の撤去有無などによって大きく変わるため、早めの対応を心がけると安心です。「費用の妥当性が分からない」「設備の処分方法に迷う」といった場合は、専門業者へ相談してみるのも良いでしょう。
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