国際輸送におけるパレットの種類とは?各国の標準サイズや注意点も紹介!
2024/11/27
基礎知識
国際輸送では、さまざまなタイプのパレットが使用されます。それぞれの特徴やメリット・デメリット、必要な処理などを把握しておくことが、物流コストの削減・運送効率の向上には重要です。
しかし具体的にどのようなパレットがあるのか、何に気を付けるべきかなどを把握できていない人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、国際輸送におけるパレットの種類や木製パレットに燻蒸(くんじょう)処理が必要となる理由などを解説します。記事後半では、各国のパレットの標準サイズや注意点もご紹介するのでぜひ参考にしてください。
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国際輸送で使用するパレットの種類
国際輸送で使用するパレットには、以下の種類があります。
● 木製パレット
● プラスチックパレット
● 金属パレット
● 段ボールパレット
それぞれのパレットの特徴を詳しく見ていきましょう。
木製パレット
木製パレットとは、その名の通り木材で作られたパレットです。十分な強度と耐久性に加えて、生産コストも安い点がメリットであり、年間3,000万枚以上(※)が生産されています。
木製パレットは、熱処理パレットと合板パレットの2つが国際的に用いられています。それぞれの概要や特徴を見ていきましょう。
※参考:一般社団法人日本パレット協会.「パレットについて | JPA」.(参照 2024-09-25)
熱処理パレット
熱処理パレットとは、輸出用の木製梱包材に対する規制を満たすための熱処理(Heat Treatment)が施されたパレットです。
具体的には、木材に寄生している可能性のある病害虫を除去するために、木材を56℃以上で30分以上加熱します。熱処理を行うことで、パレットは国際基準であるISPM No.15に準拠し、輸入国の植物検疫基準を満たすことができます。植物検疫基準が設けられているのは、病害虫が輸出先で被害をもたらすのを防ぐためです。
熱処理済みのパレットには、処理が完了したことを示す認証番号とHTスタンプが付与され、必要に応じて処理証明書が発行されます。
合板パレット
合板パレットとはその名の通り、合板から作られるパレットです。合板とは、ベニヤ板(veneer)やLVL材(laminated veneer lumber)などを接着剤で交互に重ねて圧縮した材料を指します。
合板パレットは、熱処理パレットと比較して水分含有量が少ない分、軽量です。軽量でありながらも、各層の木目が互いに交差するように積み重ねられているため、十分な強度があります。高温や低温下でも強度が保たれ、割れにくく長期的に使用可能です。さらに補修がしやすいため、コストパフォーマンスにも優れます。
またサイズや形状もカスタマイズ可能で、さまざまな輸送ニーズに対応できる点も特徴です。
プラスチックパレット
プラスチックパレットは、主にポリプロピレンやポリエチレンなどから作られるパレットです。2023年の生産枚数は約1,560万枚(※)と、木製パレットに次ぐ生産量を誇ります。プラスチックパレットの特徴は以下の通りです。
● 軽量で扱いやすい
● 耐久性に優れる
● 衛生的に管理できる
プラスチックパレットは、ポリプロピレンやポリエチレンなどの軽い樹脂で作られているため、軽量で扱いやすい点が特徴です。作業効率や輸送効率が高まるので、長期的なコスト削減効果にも期待できるでしょう。
また、プラスチックパレットは耐久性にも優れています。木製パレットと比較して湿気や腐食に強く、長期間にわたって使用できます。
さらに、衛生的に管理できる点も特徴の一つです。プラスチックパレットは表面が滑らかなため、汚れや雑菌が付きにくくなっています。常にクリーンな状態で保管する必要がある、医薬品や食料品の保管に適しています。
※参考:一般社団法人日本パレット協会.「パレットについて | JPA」.(参照 2024-09-25)
金属パレット
金属パレットは一般的にスチールやアルミニウムなどの金属からできており、スチールパレットとも呼ばれます。2023年の生産枚数は約200万枚(※)と、木製パレットやプラスチックパレットと比較して少なめです。
金属パレットの特徴は、その耐久性の高さです。他の種類のパレットと比較しても特に耐久性に優れており、長期間の使用に適しています。耐薬品性にも優れており、木製パレットやプラスチックパレットが使用できない環境下でも使用可能です。また手入れしやすく衛生的なため、医薬品や食料品の保管・輸送にも適しています。
一方で、素材価格が高いため製造コストがかかる他、簡単には修理できないためメンテナンスコストがかかる点には注意が必要です。
※参考:一般社団法人日本パレット協会.「パレットについて | JPA」.(参照 2024-09-25)
段ボールパレット
ここまでに紹介した木製パレットやプラスチックパレット、金属パレットに続き、段ボールパレットも徐々に普及しつつあります。
段ボールパレットの特徴は、その軽さです。木製パレットは15〜40kg程度の重量がありますが、段ボールパレットは数kg程度です。作業者の負担を軽減するだけでなく、空輸での輸送コストの削減にも寄与します。
また、木製パレットでの国際輸送では熱処理や燻蒸処理が必要となりますが、段ボールパレットでは必要ありません。片道のみの利用で回収しないことを前提とするワンウェイパレットとしても使用可能であり、リサイクルもできるため環境にも優しいパレットです。
国際輸送では木製パレットに燻蒸処理が必要
国際輸送では病害虫の蔓延を防止するために、木製パレットには燻蒸処理が必要となる点は把握しておきましょう。
燻蒸処理とは、木材製品や梱包材に潜む害虫や病原体を殺虫剤で駆除することです。国際輸送において、木製パレットや木箱などの梱包材が規制対象となることが多く、特に輸入国が生態系の保護を目的に要求しています。
ISPM No.15(International Standards for Phytosanitary Measures:物検疫措置に関する国際基準)では、臭化メチル燻蒸処理を行うことが規定されています。臭化メチルを用いて行われる燻蒸処理では、温度やCT値(濃度×時間)、そして24時間後の最低濃度などの規定があり、これに基づき実施することが重要です。燻蒸処理が行われたパレットには、IPPC(International Plant Protection Convention:国際植物防疫条約)マークが付与されます。
なお、ISPM No.15を導入している国のリストは、以下の通りです。
【ヨーロッパ州】
● EU(27カ国)
● ウクライナ
● グルジア
● スイス
● ノルウェー
● モンテネグロ
● ロシア
【アフリカ州】
● エジプト
● ケニア
● セーシェル
● ナイジェリア
● 南アフリカ
【アジア州】
● イスラエル
● インド
● インドネシア
● 韓国
● スリランカ
● シリア
● シンガポール
● タイ
● 台湾
● 中国
● トルコ
● フィリピン
● マレーシア
● ヨルダン
● オマーン
● レバノン
● ベトナム
● 香港
【オセアニア州】
● オーストラリア
● ニュージーランド
【北アメリカ州】
● アメリカ
● カナダ
● キューバ
● グアテマラ
● コスタリカ
● ジャマイカ
● ドミニカ
● トリニダード・トバゴ
● ニカラグア
● パナマ
● ホンジュラス
● メキシコ
【南アメリカ州】
● アルゼンチン
● エクアドル
● コロンビア
● チリ
● パラグアイ
● ブラジル
● ベネズエラ
● ペルー
● ボリビア
※参考: 植物防疫所「輸出用木材こん包材に関する各国の情報」.(参照 2024-09-25)
各国のパレットの標準サイズ
海外では国や地域ごとにルールメーカーが存在し、主要となる基準を定めています。国際輸送で用いられるパレットの標準サイズは、以下を参考にしてください。
国・地域 | 主要なルールメーカー | 主なサイズ |
ヨーロッパ | 国際鉄道連合(UIC)の後援を受けた欧州の鉄道会社 CHEPなどのレンタル各社 |
1,200×1,000mm 1,200×800mm |
アメリカ | GMA(食品製造業協会)の標準パレットが普及 | 48×40inch(1,219×1,016mm) |
オーストラリア | CHEPなどのレンタル各社 | 1,165× 1,165mm |
中国 | 国家標準化管理委員会配下の中国物流標準化技術委員会 | 1,200×1,000mm 1,200×800mm (2022年までは1,100×1,100mmも標準規格だったが、現在は除外) |
韓国 | 韓国パレットプール、政府 | 1,100×1,100mm |
台湾 | - | 1,200×1,000mm 1,100×1,100mm |
※参考:国土交通省.「諸外国におけるパレットの利用実態・事例調査」.(参照 2024-09-25)
国際輸送時の注意点
パレットの国際輸送時は「フォークを差す位置を考えて積み付けを行う」「重心位置マークについて知っておく」などの点に注意しなければなりません。それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
フォークを差す位置を考えて積み付けを行う
国際輸送でパレットを用いる際は、フォークを差す位置を考えて積み付けを行うことが重要です。フォークを差し込む位置を考慮せず積み付けを行うと、安定して積み下ろすことができません。
例えば横から爪を差し込めない場合、縦方向から爪を差し込む必要があります。この場合フォークリフトの爪がパレット全体を均等に支えられず、荷物の一部分しか持ち上げられないため、バランスが崩れ最悪の場合落下する恐れがあります。
荷物を安全に輸送・保管するためにも、あらかじめフォークを差す位置を確認してパレットを重ねるようにしましょう。
重心位置マークについて知っておく
パレット輸送では、重心位置マークについて知っておくことも重要です。
重心位置マークは、貨物の重心がどこにあるかを示しています。荷物によっては梱包により内部が見えないため、形状や重心の偏りを把握できません。重心位置マークがあれば、どこを目印にしてフォークリフトの爪を差し込めばよいのか、吊り上げればよいのかが分かるので、安全に運搬できます。
なお、重心位置マークがない場合もあります。この場合は、貨物の真ん中が重心だと考えて問題ありません。
まとめ
国際輸送では、木製パレット(熱処理パレット・合板パレット)・プラスチックパレット・金属パレット・段ボールパレットなどが用いられます。それぞれ特徴やメリットを把握した上で、適切に使い分けることが重要です。
木製パレットを国際輸送に用いる場合、病害虫の消毒を目的とした燻蒸処理が求められます。具体的な手法や基準も併せてチェックしておきましょう。
また各国で標準となっているパレットのサイズは異なります。輸出先の標準サイズを把握して、適切なサイズを選択しましょう。
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