物流業界の2024年問題を分かりやすく解説!物流業界への影響や取るべき対策とは?
2024/05/15
基礎知識
物流業界や建設業界、医療業界では、慢性的に時間外労働が実施されている状況にあることが問題視されています。これを受け、働き方改革の一環として2024年4月から時間外労働の年間上限が設定されました。
物流業界を支えるドライバーの労働環境が改善されるのは喜ばしいことですが、ドライバーを含む運送会社や荷主、一般消費者にとってはいいことばかりではありません。さまざまな不都合が生じるとされており、物流業界の2024年問題と称されています。この問題に適切に対策するためには、現状とこれから起こり得ることを把握しておく必要があります。
そこで本記事では、物流業界の2024年問題と運送会社・荷主・消費者など各方面への影響を分かりやすく解説します。記事後半では、2024年問題に対し物流業界が取るべき対策も併せてご紹介するので、2024年問題の情報を収集していたり、何をすべきか対策を練っていたりする方は、ぜひ参考にしてください。
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物流の2024年問題とは?
物流の2024年問題とは、トラックドライバーを含む一部職種の時間外労働の年間上限が960時間に設定されることにより、輸送能力が大きく低下するとされているものです。2024年4月から新たに施行された、労働時間の新たな規制(働き方改革関連法)に関連しています。
物流の2024年問題に対し、適切な対策を何も施さなかった場合、2030年には営業用トラックの輸送量のうち約35%が運べなくなると試算されています(※1)。東北地方をはじめとする地方部は、さらに深刻な状況です。東北六県(青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県)では、平均で41%もの貨物を運べなくなる状況に陥るとされています。
2024年問題による各方面への影響
2024年問題により生じ得る影響を、運送会社・荷主・消費者のそれぞれの場合に分けて詳しく見ていきましょう。
運送会社の場合
運送会社の場合は、以下の問題が生じます。
● 仕事を減らさなければならない
● 運賃を値上げしなければならない
● ドライバーの給与を減らさなければならない
それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。
仕事を減らさなければならない
多くの運送会社はこれまで、ドライバーの時間外労働により受注量を保っていた背景があります。しかし2024年4月以降、ドライバーの時間外労働時間に上限が設定されると、ドライバー一人当たりの運送できる量が減ります。
その結果、運送会社は従来通りの運送量を維持することが困難になる可能性があるでしょう。時間外労働の基準を遵守するならば、請け負う仕事量を減らさなければなりません。その結果、自ずと収益が減少し、設備投資や事業拡大も難しくなると考えられます。
運賃を値上げしなければならない
ドライバーの労働時間が制限され、仕事を減らさなければならない状況に陥ると、直接的に売上が低下します。しかし企業存続のためには、どうにかして収入源を確保しなければなりません。
その手段として、多くの運送会社は運賃を値上げする方法を取るでしょう。運賃の値上げは一時的な解決策になるかもしれませんが、荷主や消費者にとってはコスト増加になるため、利用を敬遠される可能性があります。その結果、長期的な視点で見ると収益は減少するでしょう。
ドライバーの給与を減らさなければならない
物流の2024年問題により、ドライバーの収入減少が懸念されています。距離に応じて給与が決まる形態を取っている企業が多く、時間外労働が制限されると、自ずとドライバーの走行距離と共に給与も減少するためです。
この給与減少は、ドライバーの生活に直接的な影響を及ぼします。「このままでは生活できない」「より高い給与が欲しい」とドライバーが不満を感じると、転職するきっかけになるかもしれません。
そうなると企業側は、ドライバー確保に難渋するため受注量を減らす必要があります。その結果売上が低下し、さらにドライバーの給与を削るという悪循環に陥ってしまうのです。
荷主の場合
物流の2024年問題により、荷主には「運賃が値上がりする」「日時指定で送れなくなる」などの問題が生じる可能性があります。それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。
運賃が値上がりする
今後は荷主が支払う運賃の値上がりが予想されています。これはひとえに、運送会社の運送能力が低下し、収入減を運賃の値上がりによりカバーしなければならなくなる点が原因です。
とある調査では、運送会社の実に40%以上が2024年問題の対策として値上げを検討しています。この運賃の値上がりは、荷主にとっては避けられないコスト増加となるでしょう。
日時指定で送れなくなる
荷主に及ぼす影響の一つに、荷物を日時指定で送れないことも挙げられます。日時が遅れるならまだしも、最悪の場合は輸送自体を断られるケースも考えられるでしょう。そうなると、配送の柔軟性が低下し、ビジネス運営にも悪影響が出る可能性があります。
また荷物が届くのにも時間がかかるため、必要なときに必要な物品が手元にないという状態が引き起こされるかもしれません。
一般消費者の場合
物流の2024年問題により、一般消費者には「配送料が値上がりする」「希望の日時を指定できない」などの不都合が生じるでしょう。それぞれの問題点を解説します。
配送料が値上がりする
運送会社が運賃を値上げした場合、消費者は配送コスト増加という形で負担することになるでしょう。ただでさえ、物価高によりさまざまな商品・サービスの価格が上がっている中での配送料の値上がりは、家計に大きな負担を与えます。
希望の日時を指定できない
一般消費者は、希望の日時を指定できなくなるかもしれません。
具体的には、ドライバーの労働時間が制限され人員を割けないことで、従来翌日に配送できていたものが翌々日以降になるなどです。実際にヤマト運輸は、「首都圏や新潟県と中国・四国地方の一部との間で配送される荷物」「岩手県と関西地方の間の荷物」「静岡県の一部や富山県から福岡県へ配送される荷物」などにおいて、2023年6月以降、翌日配送から翌々日配送に体制を変更することを発表しています。
その結果、野菜や魚、乳製品などの生鮮食品を、新鮮な状態で手に入れることが困難になるかもしれません。
物流業界が取るべき対策
物流業界の2024年問題により起こり得る影響は、先述した通りです。こうした問題に対し、何かできることはないのでしょうか。
物流業界全体では、以下の対策に取り組むのが効果的です。
● 働きやすい労働環境を整える
● ドライバーの人材確保に力を入れる
● 勤務時間の管理を徹底する
● バラの積み下ろしをパレットに切り替える
それぞれの対策とそのポイントを詳しく解説します。
働きやすい労働環境を整える
国土交通省の公表した資料「物流の2024年問題について」によると、2021年度時点の
トラックドライバーの年間所得額は446万円です。全産業平均の489万円と比較すると、43万円の差があります。
また年間の労働時間は、トラックドライバーが2,512時間、全産業平均が2,112時間です。トラックドライバーは全産業平均よりも、400時間も多く働いている計算になります。
物流業界は賃金が安く、時間外労働が長い傾向にあるため、まずはドライバーが働きやすい労働環境を整えることが重要です。
ドライバーの人材確保に力を入れる
経済産業省・国土交通省・農林水産省が公表した資料「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、物流業界は労働力不足が近年顕著化しており、特にトラックドライバーが不足しているとされています(※1)。
また鉄道貨物協会の平成30年度の本部委員会報告書によると、2028年度には117.5万人のトラックドライバーが必要とされています。しかし予測では、2028年度のドライバーの数は89.6万人となる見込みです(※2)。この統計を踏まえると、約28万人のドライバーが不足すると予想されています。
そのため、企業のみならず国をあげてドライバーの人材確保に力を入れる必要があるでしょう。具体的には、給与形態を見直す、予約受付システムを導入する、出荷・受入体制を整備するなどが有効です。
勤務時間の管理を徹底する
オフィスワーカーと異なり、基本的に外出しているドライバーの労働時間や休憩時間を正確に把握することは容易ではありません。しかしドライバーの過重労働を防ぎ、健康状態を良好に保つためには、勤務時間の管理を徹底する必要があります。
パソコンやタブレット、スマートフォンからGPS打刻できるクラウドサービスを利用する、勤怠管理を自動化して労働時間の適正化を図るなどの対策が有効です。
バラの積み下ろしをパレットに切り替える
バラの積み下ろしをパレットに切り替える施策も、2024年問題に対応する上で重要な対策の一つです。バラ積みバラ下ろしからパレットに切り替えると、作業の負担を大幅に削減できます。
ただしこの対策を実施する際は、運送会社だけで判断するのではなく、荷主の許可を得た上で実施する必要がある点には注意してください。また一口にパレットといっても、その材質や形状はさまざまなので、それらを正確に理解して活用することが重要です。
まとめ
本記事では、物流業界の2024年問題の詳細と運送会社・荷主・消費者に及ぼす影響、具体的な対策方法などを網羅的に解説しました。
物流業界の2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働の年間上限が960時間に制限されることに起因した問題です。ドライバーの給与が減る、運賃が値上がりする、日時指定で荷物を送れなくなるなどさまざまな問題が生じるとされています。
この問題に対して、「働きやすい労働環境を整える」「ドライバーの人材確保に力を入れる」「勤務時間の管理を徹底する」などの対策を、物流業界全体で取り組んでいく必要があります。加えて、バラの積み下ろしをパレットに切り替えるなど、ドライバーの負担軽減、運送効率向上のための対策も欠かせません。実際、パレットに切り替えている企業も増えているので、購入を検討してみてはいかがでしょうか。
キーフェル株式会社では、さまざまな材質と形状のパレットを取り扱っており、新品・注意販売や買い取り、レンタルにも対応しています。物流業界の2024年問題の対策の一環として、パレットの購入をお考えの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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