物流コストとは? 削減が難しい理由や具体的な改善策を解説

2024/03/13
基礎知識
物流業務や企業運営を改善するには、物流コストを見直すことが重要です。そのためには、まず物流コストの内訳や高騰している背景、削減するためのポイントを理解しておく必要があります。
そこで本記事では、物流コストの概要や主な内訳、上昇傾向にある理由を解説します。記事後半では、削減が難しい理由や具体的な改善策を解説するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
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物流コストとは?
物流コストとは、製品や原材料を仕入れ先から保管場所、販売先まで運搬する際に発生する費用全体を指します。
物流コストは大まかに、以下のように分類されます。
【支払い方法による分類】
● 支払い物流コスト:外注費や賃料など
● 社内物流コスト:人件費など社内で発生するもの
【プロセス別の分類】
● 調達段階コスト:原材料や部品の調達にかかるコスト
● 社内業務コスト:在庫管理など社内業務でかかるコスト
● 販売段階コスト:製品を出荷・販売する際のコスト
企業にとって物流コストの最適化は利益率の向上に直結する重要な課題です。近年は燃料費や人件費の高騰に加え、再配達問題やドライバー不足といった社会的課題も影響しており、物流コスト自体も上昇傾向にあります。
物流コストの主な内訳

物流コストの主な内訳は、以下の通りです。
● 輸送費
● 荷役費
● 保管費
● 包装費
● 管理費
それぞれのコストの概要を詳しく見ていきましょう。
輸送費
輸送費とは、製品や資材などを拠点から拠点へと移動させる際に発生する費用の総称です。主に、トラックの燃料費や車両のリース・チャーター代、配送業者への配送料、さらには自社保有車両の減価償却費や整備費用などが含まれます。
物流コストの中でも最も目に見えやすく、管理しやすい部分であるため、重点的に対策しなければなりません。物流コストに占める割合も大きいため、いかに削減するかが利益率を改善するかの鍵を握っています。
しかし、むやみに削減できるものでもないのが事実です。輸送費を過剰に削減しようとすると、トラックドライバーからの不満につながり、中長期的には会社に不利益をもたらす恐れがあります。
荷役費
荷役費とは、倉庫や物流拠点で荷物を出し入れ・整理する作業にかかる費用を指します。入庫時の荷下ろしや検品、棚への搬送、出庫時のピッキング・仕分け・梱包、さらには流通加工やラベリング作業なども含まれます。これらの作業は人手や設備に依存しており、作業量や時間によって費用が変動する点が特徴です。
WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)の導入によって作業効率を高める他、作業工程を一部アウトソーシングすることでコストを抑えることもできるでしょう。荷役費は可視化しづらい一方で改善の余地が大きく、物流コスト全体の最適化にも直結する重要な項目です。
保管費
保管費とは、商品を納品まで一定期間保管する際に発生する費用の総称です。保管には、自社の物流センターや外部倉庫を利用するケースがあり、それぞれに異なるコストがかかるので、内訳を把握しておくことが重要です。
自社倉庫の場合、人件費、機器の維持費、保険料、減価償却費などが主な内訳です。一方、外部倉庫では保管料や入出庫手数料、委託料などが発生し、保管スペースの広さや荷物の性質によって料金が変動します。
保管費を最適化するには、在庫管理の精度を高めて過剰在庫を防ぐこと、また契約条件の見直しや適切な保管方式の選定をすることが重要です。単にコストを抑えるだけでなく、保管品質や作業効率も考慮してバランス良く運用していくことが求められます。
包装費
包装費とは、商品の出荷前に行われる包装・梱包作業にかかる費用です。具体的には、ダンボールや緩衝材、テープ、ストレッチフィルムなどの資材費用の他、包装作業を行う人員の人件費も含まれます。
包装の内容は商品や配送形態によって異なり、資材の量や仕様に応じてコストが増減するのが特徴です。また、納品書の同封やラベル貼付といった付帯作業も包装費に含まれるケースがあります。贈答用の特別な箱詰めやギフト包装など、付加価値を伴う作業は「流通加工費」として区別されることもあり、別途費用が発生するのが一般的です。
管理費
管理費はその名の通り、物流全般の業務を管理するためにかかるコストを指します。入出荷処理や伝票発行、現場の管理業務などに関連した人件費が主な内訳です。
多くの場合、物流管理業務に従事するスタッフの給与やシステムの運用費などが含まれます。一般的に輸送ドライバーの人件費は輸送費に分類されますが、会社によっては管理費として計上するケースもあります。
管理費は大きく分けて「社内物流費」と「調達物流費」の2つです。社内物流費は自社運営にかかるコストで、人件費や輸送費、諸経費、その他自社保有の倉庫やトラックの管理費用が含まれます。調達物流費は、原材料や部品などを仕入先から自社の工場や倉庫まで運ぶまでのコストです。
物流コストが上昇傾向にあるのはなぜ?
内閣府の公表した、「『2024年問題』による物流費上昇の背景と物価に与える影響について」によると、運送費や梱包費、倉庫関連の費用などは年々上昇しています。
物流コストが上昇傾向にある主な理由は以下の通りです。
● 燃料費が高騰しているから
● 人件費が高騰しているから
● 積載効率が低下しているから
※参考:内閣府ホームページ.「『2024年問題』による物流費上昇の背景と物価に与える影響について」. (参照 2025-05-17)
燃料費が高騰しているから
近年、物流コストが増大している背景の一つに、燃料費の高騰があります。燃料価格は国際的な情勢に影響を受けやすく、直近ではロシアによるウクライナへの侵攻で供給が不安定になり、価格が上昇しました。
レギュラー・ハイオク・軽油の直近10年の推移 を見ると、それぞれ10年前は90円〜
100円台前半だったのに対し、2025年5月時点では160円〜190円台です。
燃料価格の上昇は、直接的に輸送費の増加につながる要因となります。特に長距離輸送や日常的に稼働する配送便では、燃料費の占める割合が高く、価格の変動が企業の収益に大きな影響を及ぼします。
また、燃料価格の上昇に伴い業者が運賃の引き上げを行うケースもあり、燃料費の高騰は物流コスト全体に波及します。
人件費が高騰しているから
物流コストの増加要因として、人件費の高騰も深刻な課題です。特にドライバーや倉庫作業員など、現場を支える人材の確保が難しくなっており、人手不足に対応するために賃金水準を引き上げざるを得ない企業が増えています。
ただでさえ慢性的に人手不足が続いている物流業界ですが、2024年よりトラックドライバーの時間外労働の上限が設けられました。これにより、2030年には輸送能力が34.1%も不足するとされています。
ドライバーの人手不足が深刻化すると、企業は人材を確保するために賃金アップや勤務体系の改善、福利厚生の充実といった対応を余儀なくされます。その結果、企業全体の物流コストが増大してしまうのです。
※参考:公益社団法人 全日本トラック協会.「物流の2024年問題」.(参照2025-05-16)
積載効率が低下しているから
物流コストが上昇している要因の一つに、積載効率の低下も挙げられます。
積載効率とは、トラックや輸送コンテナの最大積載量に対して、どれだけ効率的に荷物を積めるかを示す指標です。これが下がると同じ量の荷物を運ぶためにより多くの車両や便数が必要となり、結果的に輸送費が増加します。
国土交通省の資料「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」によると、1990年は55%弱だった積載効率は年々低下し始め、2010年以降は40%前後に減少しています。近年、EC需要が拡大し、小口配送が主流となり一度に運搬できる荷物の量が減ったことが主な要因です。
※参考:国土交通省.「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」.(参照 2025-05-17)
物流コストの削減が難しい理由
物流コストは上昇傾向にあり、それを削減するのは簡単なことではありません。
物流コストの削減が難しい理由の一つに、コスト構造のブラックボックス化が挙げられます。多くの企業は物流全体にかかる費用の総額は把握していても、個別業務ごとの詳細な内訳や、それぞれのコストの妥当性を把握できていません。特に、複数の倉庫や配送業者と契約している場合、業務が委託先に分散し、全体像をつかむのが難しくなります。
その結果、物流全体のどの部分が原因となりコストがかさんでいるのかが分からず、的確なコスト削減の施策を打てない場合が多いのです。
物流コストを削減するための具体策

物流コストを削減するための具体策には、以下が挙げられます。
● 現状の物流コストを可視化する
● 拠点の数や場所を見直す
● 倉庫内のレイアウトやルールを見直す
● ITツールを導入する
● 業務を外注する
それぞれの具体策を詳しく見ていきましょう。
現状の物流コストを可視化する
物流コストを削減するためには、まず現状の物流コストを可視化することが重要です。
多くの企業では物流費の総額は把握していても、項目ごとの詳細な内訳や、それぞれのコストがどの業務に対応しているのかを明確に管理できていません。物流コストを細かく可視化すれば「特定のエリアへの配送料が割高になっている」「在庫管理に必要以上のリソースが割かれている」などの具体的な課題が浮き彫りになります。
また可視化により、「どこから優先的に取り組むべきか」「なぜそのコストを重点的に削減すべきか」なども明確になるでしょう。裏付けされたデータを基に関係者間で共通認識を持つことができ、部門をまたいだ情報共有や外部業者との適正な契約見直しにもつながります。
拠点の数や場所を見直す
物流コストを削減するための有効な手段の一つが、物流拠点の数や配置場所を見直すことです。配送拠点や倉庫が過剰に分散していると、在庫の分散による管理コストの増加や、輸送経路の長距離化などが引き起こされます。
一方、拠点数を必要最低限に絞り、顧客や取引先の集中エリアに近い立地に再配置することで、輸送距離の短縮や配送回数の削減が可能となり、大幅なコストダウンが見込まれるでしょう。
また、拠点の集約によって在庫管理や人員配置の最適化が図れ、人件費の削減や業務の効率化にもつながります。
しかし、ただ単純に拠点数を減らせば良いわけではありません。物流拠点を分散させることで、配送時間の短縮や災害時のリスク分散といったメリットも得られます。これらを総合的に考慮しながら、慎重に判断することが大切です。
倉庫内のレイアウトやルールを見直す
物流現場のレイアウトや業務ルールを見直すことは、日々の作業効率を大きく改善することでもあるため、物流コストの削減につながります。
例えば、倉庫内の動線が明確ではない場合、ピッキングや仕分けに無駄な移動が発生し、作業時間と人件費が余分にかかってしまいます。ルールが曖昧なままだと、属人化やミスも発生しやすく、トラブル対応に余計なコストがかかってしまうかもしれません。
そこで棚の配置や作業順序、レイアウト、出荷基準などの運用ルールを明確化・標準化すると、作業者によらず高い生産性を保てます。
なお作業内のルールを策定する際は「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」からなる5S活動を意識しましょう。
ITツールを導入する
物流コストを削減する際、ITツールの導入も効果的です。代表的なITツールには、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)やTMS(Transport Management System:輸配送管理システム)などがあります。
WMSとは、倉庫内の在庫管理を効率化するITツールです。入庫・出庫・ピッキング・棚卸などの作業をデジタルで一元管理できます。在庫状況の可視化、倉庫業務の効率化を考えているなら導入を検討してみましょう。
TMSは、商品の配送に関する業務を効率化・最適化するITツールです。燃料費・人件費の見直し、配車・配送計画、運行記録などを行えます。
業務を外注する
自社で対応していた倉庫管理や配送業務などの一部業務を専門業者に委託することで、物流コストを削減できる可能性があります。業務を外注するメリットは、以下の通りです。
● 教育コストがかからない
● 物流のプロに業務を任せられる
● 自社は重要な業務に集中できる
業務の外注は一時的にはコストがかかりますが、空いたリソースを活用して自社ではよりコアな業務に集中できるため、利益につなげられるでしょう。委託する際は、コストの内訳や業務範囲を明確にしておくことが重要です。
まとめ
本記事では、物流コストの概要や内訳、削減する方法などを網羅的に解説しました。
物流コストとは、製品や原材料を仕入れ先から保管場所、販売先まで運搬する際に発生する費用のことを指し、近年は社会的に上昇傾向にあります。コストを削減するには、現状の配送フローや倉庫レイアウトを見直す他、ITツールの導入なども検討してみましょう。
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